24時間、本とつながれる場所。山下書店大塚店のやさしい日常

山手線・大塚駅からすぐの場所に、昼も夜も静かに光を灯し続ける本屋さんがあります。それが、1999年9月にオープンした【山下書店 大塚店】です。今回は、店長の出沖(いずおき)さんに、書店の魅力や大塚の街とのつながりについて、じっくりお話を伺いました。

この記事を書いた人
編集部大嶺晋弥

【大嶺 晋弥】

本を読むことは少ないが、空気は沢山読んでいる(つもり)。

「24時間営業」の本屋さんが大塚に爆誕!

24時間営業ならではの利点

山下書店は、もともと渋谷で展開していた書店チェーン。渋谷で成功を収めた“24時間営業”という攻めたスタイルを、そのまま大塚でも実現したのがこのお店です。

「午前0時になった瞬間に新刊が買える」という強みが話題を呼び、いつしかファンの間では“世界最速で本が買える本屋”と呼ばれるようになりました。深夜の街角に、ひっそりと開かれた最新刊への近道。そんな静かな特別感が、ここにはあります。

「本が好き」から始まった書店人生

店長の出沖さんは、本と音楽が好きで、特に本への関心が次第に強くなり、知識を深めるために書店の仕事を選びました。始めは渋谷の山下書店で経験を積み、やがてこの大塚店へ。インタビュー中も終始穏やかで、話題は本から登山、そしてなぜか怪談話にまで発展……(笑)。

話が弾み、ついついインタビュー中に脱線してしまいました。親しみやすくてちょっとユニーク。そんな出沖さんの人柄が、この店の空気感をやわらかくしているのかもしれません。

地元愛とワクワクのチョイス

地元を大切にする棚づくり

山下書店大塚店の魅力は、本のセレクトにも表れています。入り口には、都電荒川線や巣鴨、池袋など“大塚周辺”にまつわる本がずらり。地元の人も、ふと足を止めて手に取ることが多いそうで、中でも「おにぎり ぼんご」の本が飛ぶように売れているとか。

地域に根差した棚づくりは、まさに「街に愛される本屋さん」ならではの工夫です。

子どもたちの“秘密基地”のような場所に

山下書店には、本以外にもユニークな雑貨がたくさんあります。黒板消し型のスマホクリーナーや針の無いホチキス、スプランキー・イタリアンブレインロットといったYouTube発の人気アニメグッズなど、日本人に限らず世界中の子どもたちの目が輝くようなアイテムが目白押し。

常連の子どもが家族や友達を連れてきて、店内を案内したり、自慢げに雑貨の“プレゼン”をしてくれる光景も見られるそうです。そんな微笑ましい様子に、出沖さんは「やってきたことは間違ってなかった」と心から思ったと話してくれました。

お客様とのあたたかな交流

書店の外でも、大塚のまちを歩けば常連さんから声をかけられることが多いという出沖さん。「渋谷店時代には無かったこと。大塚という街のあたたかさを感じる」と語ります。何気ないあいさつ、ちょっとした会話の積み重ねが、この店と地域の絆を深めているのです。

本が導く新しい世界

一冊の本が、自分を生まれ変わらせてくれることもある。

出沖さんに「自分の人生が動いた一冊はありますか?」と尋ねると、即答で『サバイバル登山家』(服部文祥 著)を挙げてくれました。とりわけ心を打たれたのは、「経験が人を形成する」という考え方だったそうです。たとえ自分に弱点があったとしても、これからどんな経験をするかによって、自分自身はいかようにも変わっていける。その力強い視点に感銘を受けたと語ってくれました。

本には、人の考え方を変え、人生そのものを動かす力がある。まさにそれを実感させてくれる一冊だったのでしょう。筆者は普段読書をしないタイプですが、この話を聞いて読書デビューする事を決心しました。

目指すのは「大塚で一番に思い出される本屋さん」

これからどんな本屋を目指していきたいですか?と尋ねると、「地域で一番、“あそこに行こう”って真っ先に思い浮かべてもらえる本屋になりたいです」と、力強く答えてくれた出沖さん。いつ来ても変わらない居心地と、ちょっとした発見がある場所。

山下書店大塚店は、これからも人と本がやさしく交わる“街のよりどころ”として、あたたかい時間を届けてくれるはずです。

住所 東京都豊島区北大塚2-14-5 KYビル1F
営業時間 24時間営業
定休日 年中無休
アクセス JR大塚駅北口 徒歩1分
電話番号 03-3915-2262
公式サイト 公式サイト