大塚おにぎりぼんご 女将右近由美子の人情
大塚の北口を歩くたび、吸い寄せられるようにできる行列。その先にあるのは「でっかくて美味しいおにぎり」だけじゃなく、食べる人の体温まで上げるような人情でした。名物女将・右近由美子さんの言葉を聞き、今回はおにぎりの裏側にある温かな物語をお届けします。
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大嶺晋弥 |
【大嶺 晋弥】お米が大好きです。いつか炊飯器先輩みたいに、そばにいる人の心まで温められる人になるのが目標です。 |
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行列の正体は人情だった
行列8時間でも笑顔が消えない 女将の元気が店の味になる

ぼんごは行列店として有名で、過去には8時間待ちの日もあったそうです。そんな日でも由美子さんは、目の前のお客さん一人ひとりにちゃんと目を向けて、声をかけ、場の空気を明るくする。さらに面白いのが、働き始めは握り手ではなく行列整理からスタートすること。
暑い日も寒い日も外でお客さんと同じ時間を過ごすから、自然と気持ちがわかるようになる。だからカウンターに立った時は「1秒でも早く案内したい」と本気で思えるようになるそうです。
おにぎりより人を売る 覚悟が必要な職場が店を強くする

由美子さんが何度も口にするのが「商売で一番大事なのは人、人、人」。美味しいのは当たり前で、そこに辿り着く前の人間性を一番大切にしている。だから働く側にも覚悟がいる。
「根性のある変人じゃないと続かない」という言葉が妙にリアルで、笑いながらも背筋が伸びました。技術だけの職人集団ではなく、人間力の高いチームだからこそ行列が絶えないんだと納得しました。
この一皿に人生を乗せるべし
力加減と塩加減で決まる黄金比

「具材が崩れないくらいの力加減」が大前提。でも形を作ろうと握りすぎると固くなる。この矛盾を解くのが、ぼんごの握り。
力だけじゃなく、塩の当て方、見栄え、米の量、握っている時の動作の流れまで、全部のバランスが揃って初めてあの食感になるそうです。カウンター越しに手元を見ると、押していないのに整っていく感じ。ミスターマリック超えのハンドパワー。
白米のみが一番むずい

意外にも一番難しいのは「しろ」と呼ばれる白米だけのおにぎり。具も海苔もないから誤魔化しが効かず、握り手の技術がそのまま味になる。海苔だけは「くろ」。短い呼び名に、ぼんごの世界観が詰まっていました。
初めての人ほど派手な具へ行きたくなるけれど、一個はしろを入れてほしい。ぼんごの基礎力が、一口で伝わります。
全58種の具材には物語がある
卵黄の完成度が異次元でどの具とも相性がいい

由美子さんイチオシのひとつが卵黄。試行錯誤を重ねて完成した自信作で、醤油の旨みをまとった黄身が、ご飯の熱でとろっと広がります。卵黄は最強の相棒。どの具材と合わせても美味しい。卵黄+肉そぼろ、卵黄+納豆、卵黄+豚キムチ、迷ったらまず卵黄です。
ご近所の縁が新定番になったペペロンチーノ

おにぎりなのにペペロンチーノ、と最初は疑います。けれど一口で香りと旨みがドン。近隣のイタリアンeightdays dining(エイトデイズダイニング)考案という話も含めて、街の縁が具になるのが大塚らしい。
しかも具材のほとんどがお客さんのリクエストから増えたそうです。メニュー表が会話の歴史。だから選ぶ時間まで楽しいのです。
由美子さんの人生が そのまま店の味になっている
19歳で家出、ノープラン上京が人情店主を作った

19歳で家出し、新潟からノープラン上京。勢いだけで東京に来て、その足で喫茶店へ飛び込み「働かせてください」と直談判。紹介で住み込みの仕事まで確保してしまう行動力と運の良さは、もう漫画の主人公です。
やがて、初代店主でドラマーだった祐さんと出会い結婚。店名「ぼんご」には、打楽器の音のように評判が遠くまで響くように、という願いが込められているそうです。そしてその願いは、いま目の前の行列として現実になっている。
人生の節目がすべて人との縁でつながっていて、その積み重ねが、いまの接客の温度にそのまま表れている、そんなふうに感じました。
練習会は朝から全員エンジン全開

ぼんごの裏側でグッと惹かれたのが、スタッフの「練習会」の存在です。雰囲気がほぼ部活。早朝なのに、誰も眠い顔をしない(というか、できない)。手元は真剣、空気は明るい。由美子さんもいつも通り朝から元気ハツラツで、その場の温度をぐいっと上げていきます。
見ていて強く思ったのは、ここで磨かれているのが握りの技術だけじゃないということ。温かな接し方、声のかけ方、気配り、目配り。徹底的にお客さんに寄り添う姿勢まで、店全体の呼吸を合わせていく。だから営業中のカウンターが、あんなに流れるように気持ちいいのかと、腑に落ちました。
一個のおにぎりの背後に、朝から汗をかいて、笑って、整える人たちがいる。ぼんごは名店である前に、人情で満腹にしてくれる場所でした。大塚に来た際は是非、炊き立てご飯より温かいスタッフに心ごと握ってもらってください。
| おにぎりぼんごの店舗情報 | ||||||||
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| 住所 | 東京都豊島区北大塚2-27-5 | |||||||
| 営業時間 | 9:00~21:00 | |||||||
| アクセス | JR大塚駅 北口徒歩2分 | |||||||
| 駐車場 | なし ※近隣パーキング有り | |||||||
| 決済方法 | 現金のみ | |||||||
| 電話番号 | 03-3910-5617 | |||||||
| 公式サイト | 公式サイト | |||||||
大嶺晋弥